トップZOOたん~全国の動物園・水族館紹介~第8回 サファリパークの歩き方

日本で唯一の動物園ライター。千葉市動物公園勤務のかたわら全国の動物園を飛び回り、飼育員さんたちとの交流を図る。 著書に『ASAHIYAMA 動物園物語』(カドカワデジタルコミックス 本庄 敬・画)、『動物園のひみつ 展示の工夫から飼育員の仕事まで~楽しい調べ学習シリーズ』(PHP研究所)、『ひめちゃんとふたりのおかあさん~人間に育てられた子ゾウ』(フレーベル館)などがある。

第8回 サファリパークの歩き方

こんにちは、動物園ライターの森由民です。ただ歩くだけでも楽しい動物園。しかし、 動物のこと・展示や飼育の方法など、少し知識を持つだけで、さらに豊かな世界が広がります。そんな体験に向けて、ささやかなヒントをご提供できればと思います。

●今回訪ねた動物園:多摩動物公園、群馬サファリパーク、アドベンチャーワールド、姫路セントラルパーク

サファリパークを……歩く?なんだか変なタイトルだな、とお思いでしょうか。今回は動物園の展示法に注目して「サファリ形式」についてお話しします。

tama_150904 179放し飼いの動物たちの中に乗り物に乗った来園者が入っていく。これが「サファリ形式」ですが、「世界ではじめて」サファリ形式をつくったのは日本です。1964年から多摩動物公園で走ってきたライオンバスが世界初の「サファリ展示」です(※)。

※長い間人々に親しまれてきたライオンバスですが、施設の耐震化工事のため2016年4月1日で運行を休止します(再開時期については未定です)。

その後、1975年に日本初の本格的なサファリパークとして宮崎サファリパーク(1986年に閉園)が出来たのを皮切りに自家用車でのドライブ・スルーを楽しめるサファリパークが全国各地に生まれていきました。

自家用車という各家庭を単位にした乗り物をフィーチャーし来園手段と観覧手段をつなぎ合わせたサファリパークは、まさに「時代を象徴する存在」だったと言えるでしょう。

しかし、いまや「家族みんなで自家用車で」というコンセプトだけに頼っていては来園者の維持や増加は期待できません。サファリパークのそれぞれが自分たちの園なりの「プラス・アルファ」を工夫しています。

gunma_safari_130812 352動物の種類や展示法で新しい魅力を創り出すのもひとつの方法です。群馬サファリパークでは川や木々などで景観をつくって、北アメリカの平原で暮らすアメリカバイソンの姿を実感させています。時にはサファリバスも「バイソン待ち」。

南紀白浜101022 214白浜120326 342rアドベンチャーワールドは最も多様な観覧手段を持つサファリパークでしょう(※)。機関車型のバスをはじめ各種のバスやジープなど、いろいろなタイプの乗り物が運行しています。草食動物ゾーンは徒歩による「ウォーキングサファリ」のほか、来園者自身が運転できる電動カートやレンタサイクルも選べます。

白浜120326 229徒歩でだけ入っていける道もあります。

※サファリエリア(サファリワールド)のほかに、中国本土以外では世界最多の繁殖実績のジャイアントパンダたち、カバ・チンパンジーなどがいるオーソドックスな動物園エリア、ホッキョクグマ・ペンギン・イルカなどの水族館型飼育展示施設や遊園地もあり、総合アミューズメントパークとしての性格を持っていることも注目されます。

姫路100330_1 400姫路100330_1 525姫路セントラルパークもいち早く「ウォーキングサファリ」をつくりました。来園者が入っていけるケージの中は、鳥や小動物などと文字通り直接に出会うことができ、それぞれの人が自分のペースで楽しめる点でもドライブ・スルーとは一味違ったものとなっています。

姫路100330_1 876姫路セントラルパークのウォーキングサファリはサファリバスや自家用車で辿り着く丘の上から緩やかに下った麓付近に展開されています。御覧のように丘の上にはロープウェイで戻るのですが、これもいわば「鳥の目」でサファリ全体を見渡す経験となり「スカイサファリ」と名付けられています。

姫路100330_1 915特に、メスたちと別に暮らしているアフリカゾウのオス「ヒロ」(オスでは国内最高齢の35歳)は、ふだんスカイサファリからしか観察できません(※)。

※体調や天候の理由で展示を中止する場合もあります。

サファリパークばかりでなく、展示のあり方そのものが時代や社会を映し出すのが動物園というものでしょう。それは、わたしたち利用者が無意識にしろどんな動物観を持ち、どんな動物園体験を求めているのかとも響きあっているでしょう。

そして、たとえばサファリパークに「歩く」という要素の復活が見られるように、動物園がどうあるべきか・何を目指していくかの答えはひとつではありません。そこでも、わたしたちが何を望むか・何を大切にするかが動物園の歴史を方向付ける可能性があるのです。わたしたちもまた動物園を「創って」います。

動物園に行きましょう。

◎サファリ形式が体験できる動物園

多摩動物公園(ライオンバスの運行は2016年4月1日から運休)

公式サイト http://www.tokyo-zoo.net/zoo/tama/

群馬サファリパーク

公式サイトhttp://www.safari.co.jp/

アドベンチャーワールド

公式サイト http://www.aws-s.com/

姫路セントラルパーク

公式サイト http://www.central-park.co.jp/

写真提供:森由民

第1回 トウキョウトガリネズミ
第2回 サバンナに集う
第3回 メンフクロウとドブネズミ
第4回 ペンギンを見分けよう
第5回 知れば楽しい! 牛シシシ
第6回 サルのなかま
第7回 狢(むじな)と狸(たぬき)

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日本で唯一の動物園ライター。千葉市動物公園勤務のかたわら全国の動物園を飛び回り、飼育員さんたちとの交流を図る。 著書に『ASAHIYAMA 動物園物語』(カドカワデジタルコミックス 本庄 敬・画)、『動物園のひみつ 展示の工夫から飼育員の仕事まで~楽しい調べ学習シリーズ』(PHP研究所)、『ひめちゃんとふたりのおかあさん~人間に育てられた子ゾウ』(フレーベル館)などがある。