トップZOOたん~全国の動物園・水族館紹介~第11回 ネコのヒゲ・キリンの眉毛・鳥のハゲ

日本で唯一の動物園ライター。千葉市動物公園勤務のかたわら全国の動物園を飛び回り、飼育員さんたちとの交流を図る。 著書に『ASAHIYAMA 動物園物語』(カドカワデジタルコミックス 本庄 敬・画)、『動物園のひみつ 展示の工夫から飼育員の仕事まで~楽しい調べ学習シリーズ』(PHP研究所)、『ひめちゃんとふたりのおかあさん~人間に育てられた子ゾウ』(フレーベル館)などがある。

第11回 ネコのヒゲ・キリンの眉毛・鳥のハゲ

こんにちは、動物園ライターの森由民です。ただ歩くだけでも楽しい動物園。しかし、 動物のこと・展示や飼育の方法など、少し知識を持つだけで、さらに豊かな世界が広がります。そんな体験に向けて、ささやかなヒントをご提供できればと思います。

 

・今回ご紹介する動物:ホワイトタイガー・ライオン・キリン・ヒゲワシ・アンデスコンドル・タンチョウ

・訪ねた動物園:伊豆アニマルキングダム・みさき公園・静岡市立日本平動物園・飯田市立動物園・羽村市動物公園伊豆アニマル101012 836

 

ネコやイヌの顔のどこにヒゲがあるか、いきなりそらで正解を描ける方は少ないのではないかと思います。大型のネコ類であるホワイトタイガーもよく見れば、頬だけでなく目の上など、おおよそ顔を取り囲むように「ひげ」があります。これらは根元に敏感な感覚細胞がある「感覚毛」で、繁みの中などをすり抜ける時、ぶつかったりせずに素早く動くのを助けてくれます。伊豆アニマル100523 427

 

伊豆アニマルキングダムには、食事を楽しみながらライオンやホワイトタイガーと間近で向き合える「レストラン・アニマルキングダム」があります。雨の日でも心配は御無用です。伊豆アニマル100523 434_435

ライオンの感覚毛を極めるチャンスかもしれません。misaki_140404_05 181p

「キリンには眉毛がある」などと言われます。みさき公園の餌やり体験でしっかり観察してみましょう。実はこの「眉毛」も感覚毛が密生したもので、わたしたちの眉毛とは異なります(ヒトは感覚毛を持ちません)。misaki_140404_05 008

野生のキリンの好物のサバンナアカシアには鋭いとげがあります。キリンが舌で葉をからめとるように食べる時、かれらの敏感な「眉毛」はとげで目を傷つけるのを防いでくれるのです。これは、みさき公園の飼育担当者が裏で育てていた一鉢です。nihondaira_131219 418

 

トラ・ライオン・キリンなどのヒゲ同様、鳥たちの「ハゲ」もかれらの暮らしと結びついています。ヒゲワシはあごの下の羽毛の様子からこんな名を持ちますが()、よく見ると顔の皮膚が露出しています。かれらは動物たちの遺体を食べる「掃除屋さん」です。そんな時、顔の羽毛は汚れやすいので、この部分がハゲていると考えられています。ヒゲワシは、遺体の骨を空中から岩などに落として砕き、呑み込みやすい大きさにするユニークな食事法でも知られています(胃酸が強力なので呑み込めれば骨も溶かしてしまいます)。

 

※現在、日本国内のヒゲワシ展示は静岡市立日本平動物園にいるこの一羽のみです。1985年に中国から来園しました。ちなみにメスで名前は「クリッパー」です。iidashi_140628 654iidashi_140628 656

 

飯田市立動物園では、アンデスコンドルが高みから舞い降りて食事をするダイナミックな行動が観察できます()。

※同園サイトの「お知らせ」からイベントスケジュールを御確認ください。風向きなどにより、時には飛ばずにおりてくることもあります。また雨天中止となりますiidashi_140628 665iidashi_140628 666

 

食事後の物陰、実は地面に頭をこすりつけています。コンドルも「掃除屋さん」の特徴として裸の頭部をしていますが、さらに食事後にこうやって顔をきれいにする行動が知られています。

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最後は羽村市動物公園です。同園では、家畜や日本人になじみのある動物たちの展示施設に童話や昔話のモチーフを取り入れています。タンチョウの展示も「つるのおんがえし」と名づけられています。hamura_140816 221hamura_140816 220

田舎家を覗き込むとまるでツルが機織りをしているように見えますが、これは餌箱をついばんでいるのです。動物たちの自然な行動を活かしながら、物語の世界が立ち現われます。hamurashi_151013 405

タンチョウ(丹頂)は頭の頂上が赤い(丹)ことからそう名づけられていますが、これも羽毛がなくて皮膚が露出している部分です。ここは興奮すると広がり、相手を威嚇する効果があると考えられています。

 

動物たちの体は、かれら本来の暮らしを反映しています。ヒゲやハゲのユーモラスなイメージの向こうに、時にはそんなそれぞれの進化を感じて、さらに細やかな観察をしてみましょう。

 

動物園に行きましょう。

 

 

☆今回取材した園

◎「ホワイトタイガー」「ライオン」に会える動物園

伊豆アニマルキングダム

公式サイト http://izu-kamori.jp/izu-biopark/

 

◎「キリン」に会える動物園

みさき公園

公式サイト http://www.nankai.co.jp/misaki/

 

◎「ヒゲワシ」に会える動物園

静岡市立日本平動物園

公式サイト http://www.nhdzoo.jp/

 

◎「アンデスコンドル」に会える動物園

飯田市立動物園

公式サイト http://iidazoo.jp/

 

◎「タンチョウ」に会える動物園

羽村市動物公園

公式サイト http://www.t-net.ne.jp/~hamura-z/

 

 

写真提供:森由民

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