トップZOOたん~全国の動物園・水族館紹介~第16回 きになる動物たち

日本で唯一の動物園ライター。千葉市動物公園勤務のかたわら全国の動物園を飛び回り、飼育員さんたちとの交流を図る。 著書に『ASAHIYAMA 動物園物語』(カドカワデジタルコミックス 本庄 敬・画)、『動物園のひみつ 展示の工夫から飼育員の仕事まで~楽しい調べ学習シリーズ』(PHP研究所)、『ひめちゃんとふたりのおかあさん~人間に育てられた子ゾウ』(フレーベル館)などがある。

第16回 きになる動物たち

こんにちは、動物園ライターの森由民です。ただ歩くだけでも楽しい動物園。しかし、 動物のこと・展示や飼育の方法など、少し知識を持つだけで、さらに豊かな世界が広がります。そんな体験に向けて、ささやかなヒントをご提供できればと思います。

・今回ご紹介する動物:オーストラリアガマグチヨタカ・ミゾゴイ・コノハムシ・コノハウオ

・訪ねた動物園:キャンベルタウン野鳥の森・宮崎市フェニックス自然動物園・横浜市立野毛山動物園・伊丹市昆虫館・しながわ水族館

その風変わりな暮らしが気になるのに、ぱっと見には気づかないことさえある動物たち。今回は、そんなちょっぴり不思議なお話です。

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細く長くまっすぐに……よく見れば鳥です。

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オーストラリアガマグチヨタカはオーストラリア大陸とタスマニア島に住み、特にユーカリ林を好みます。夜行性で主に昆虫などを食べますが、昼間には最初の写真のような姿で枝にとまり、木の一部に擬態して身を守っています。

キャンベルタウン・野鳥の森では、ゲートを入ってすぐに何羽かのオーストラリアガマグチヨタカが交代でお出迎えをしてくれ、しばしば見事な擬態も披露してくれます。

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サギの一種のミゾゴイは日本から東南アジアの一部にかけて分布しています。繁殖地はほぼ日本国内に限られていると考えられますが、日本や越冬地である東南アジアの森の減少などに影響され、いまでは1000羽以下と推測される絶滅危惧種です。

そんなかれらも「木になる動物」です。警戒している時など、体を細長くしてじっとしていると枯葉に似た体の色合いもあって、すっかり森の景色に溶け込んでしまいます。

国内の動物園でミゾゴイを展示しているのは宮崎市フェニックス自然動物園と横浜市立野毛山動物園だけです。さきほどの写真は宮崎市フェニックス自然動物園の個体です(2012/8/22撮影)。いささか擬態めいた姿を見せてくれています。

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こちらは横浜市立野毛山動物園です(2016/5/31撮影)。ミゾタロウと呼ばれるこの個体はよく枝をくわえて歩く姿が観察されます。その行動の意味はまだはっきりしないようですが。

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そんなミゾタロウも、時にはふと擬態モード(写真提供・大木正美)。

わたしたちからもそう遠くはない里山の森にひっそりと住みつつ、ミミズ・サワガニ・土壌昆虫などを食べるミゾゴイは森の生きものたちのつながりが健康に保たれているかを教えてくれる存在でもあります。

野毛山動物園と同じ横浜市の「横浜市繁殖センター」では、昨年(2015年)6月に全国初のミゾゴイの飼育下繁殖に成功しています。

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続いては「木(葉)になる虫」です。東南アジアに住むコノハムシは木の葉そっくりの姿で鳥などの捕食者から身を守っています。枯れ色や虫食いの跡まで感じさせ、まさにぱっと見では気になることもなく見逃してしまいそうです。

この展示を行なっている伊丹市昆虫館によると、国内でコノハムシが見られるのは3館だけということです。

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最後は「葉になる魚」コノハウオ(リーフフィッシュ)です。アマゾン川ほか南アメリカ北部の淡水域に分布します。かれらの場合、水中の枯れ葉や朽ち木に紛れるその姿は、獲物の小魚などを待ち伏せするのに役立っています。

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しながわ水族館では2015年1月生まれの幼魚たちも展示していますが、このように口を突き出す「ハンティング・スタイル」を披露してくれることもあります。

誰がデザインしたわけでもないのに、森や木の葉の中で暮らす動物たちは、しばしばその環境に溶け込むような姿に進化しています。そこには植物と動物・環境と生きもののしっかりとしたつながりあいが見て取れます。動物園の展示は、普段の生活ではつい忘れてしまう、そんな事実にも気づかせてくれます。

動物園に行きましょう。

☆今回取材した園

◎オーストラリアガマグチヨタカに会える動物園

キャンベルタウン野鳥の森

公式サイト http://yacho-nomori.kosi-kanri.com/

◎ミゾゴイに会える動物園

宮崎市フェニックス自然動物園

公式サイト http://www.miyazaki-city-zoo.jp/

横浜市立野毛山動物園

公式サイト http://www2.nogeyama-zoo.org/

◎コノハムシに会える動物園

伊丹市昆虫館

※2016年9月1日~2017年1月1日まで設備修繕工事のために長期休館

公式サイト http://www.itakon.com/

◎コノハウオに会える動物園

しながわ水族館

公式サイト http://www.aquarium.gr.jp/

写真提供:森由民。注記されたものを除く。

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日本で唯一の動物園ライター。千葉市動物公園勤務のかたわら全国の動物園を飛び回り、飼育員さんたちとの交流を図る。 著書に『ASAHIYAMA 動物園物語』(カドカワデジタルコミックス 本庄 敬・画)、『動物園のひみつ 展示の工夫から飼育員の仕事まで~楽しい調べ学習シリーズ』(PHP研究所)、『ひめちゃんとふたりのおかあさん~人間に育てられた子ゾウ』(フレーベル館)などがある。