トップ十人十色の育ち方~どの子にもうれしい子育てのはなし~第14回言葉は少ないけど数字や文字に興味があるGくん

横浜国立大学大学院教育学研究科修了。修士(教育学)、特別支援教育士、日本ムーブメント教育・療法協会認定常任専門指導員。現在、鶴見大学短期大学部保育科准教授、北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科非常勤講師。女優東ちづるさんが理事長を務める一般社団法人Get in touchの理事としても活動。障がいのあるなしにかかわらず、どの子にもうれしいまぜこぜの保育をめざし日々幼稚園や保育所、こども園へ出向き奮闘中。

第14回言葉は少ないけど数字や文字に興味があるGくん

子どもはいろいろ、文字通り「十人十色」。子どもの「できない」ことに目を向けるのではなく、今「できている」ことに注目してみることが肝心です。このシリーズでは、子育ての中で思わず「あるある!」と感じる、子どもたちのいろんな行動について、周りの大人はどのように寄り添えばいいのか、紹介していきます。気軽に読んでみてください。
 
朝晩の寒さをしっかりと感じるようになってきました。体調を崩しやすい時期ですが、皆さんお身体ご自愛くださいね。
 
以前、自閉スペクトラム症の傾向が強い4歳児のGくんに出会いました。Gくんは音の出るおもちゃやパズルで遊んだり、積み木や粘土をちぎったり並べたりすることが大好きです。数字や文字にも興味があって、数字のカードを順番に並べて楽しんでいます。
 
「いや」「ばいばい」「やって」など簡単な言葉は話すようになりましたが、まだまだ言葉は少なく、泣いたり、大人の手をとって要求したりすることが多く見られます。一人遊びをすることがほとんどで、こだわりも強く、自分の並べているカードをさわられると、怒ってかんしゃくを起こします。また、自分の遊びたいおもちゃを他の子どもが使っていると、かみついたり、引っかいたりして取り合う姿も見られます。少しずつ人への関心も出てきているようですが、まだ友だちと一緒に活動することは難しいようです。Gくんが落ち着けるようにとクラスには好きなおもちゃを置いてみましたが、長い時間そこにとどまることはできていないようです。
 
自閉スペクトラム症の傾向が強く、行動や遊びに「こだわり」がある場合、それらを「やめさせる」とか「なくそう」と考えるのではなく、楽しみにしている「こだわり」に寄り添うことを考えてみることが大切です。たとえば、数字の何に興味があってどのように遊び、どのように楽しむのかを保育者が知っていきます。そして、その子どもの遊びを取り入れて、クラスの友だちとの遊びに展開できないかを検討してみるのです。
Gくんは自分の好きな遊びに夢中になっていることで安心します。そして、好きな遊びを保障されることで、安心して幼稚園で過ごすことができるのです。保育者がGくんの遊びを受け入れ認めることで、クラスの友だちもGくんを受け入れ認めていくことができます。数字や文字に興味をもつGくんの遊びをクラスのみんなで行うことによりGくんも認められたという安心感から、クラスにも居場所を感じるようになっていくでしょう。
保育者が先頭に立ってGくんの存在を認めていくことの積み重ねをしてくことが大切です。最初からクラスの友だちと同じ活動をさせたり、一緒に遊ばせたりしようとする保育をするのではなく、Gくんの遊びを発展させることでGくんの存在を自然と子どもたちに浸透させることができるでしょう。物の取り合いが生じたら、「貸して」などの言葉をGくんが伝えられるようにうながせるといいですね。

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横浜国立大学大学院教育学研究科修了。修士(教育学)、特別支援教育士、日本ムーブメント教育・療法協会認定常任専門指導員。現在、鶴見大学短期大学部保育科准教授、北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科非常勤講師。女優東ちづるさんが理事長を務める一般社団法人Get in touchの理事としても活動。障がいのあるなしにかかわらず、どの子にもうれしいまぜこぜの保育をめざし日々幼稚園や保育所、こども園へ出向き奮闘中。