トップZOOたん~全国の動物園・水族館紹介~第21回 山のオウムはいたずら好き

日本で唯一の動物園ライター。千葉市動物公園勤務のかたわら全国の動物園を飛び回り、飼育員さんたちとの交流を図る。 著書に『ASAHIYAMA 動物園物語』(カドカワデジタルコミックス 本庄 敬・画)、『動物園のひみつ 展示の工夫から飼育員の仕事まで~楽しい調べ学習シリーズ』(PHP研究所)、『ひめちゃんとふたりのおかあさん~人間に育てられた子ゾウ』(フレーベル館)などがある。

第21回 山のオウムはいたずら好き

こんにちは、ZOOたんこと動物園ライターの森由民です。ただ歩くだけでも楽しい動物園。しかし、 動物のこと・展示や飼育の方法など、少し知識を持つだけで、さらに豊かな世界が広がります。そんな体験に向けて、ささやかなヒントをご提供できればと思います。

 

●今回ご紹介する動物: ベニコンゴウインコ・ルリコンゴウインコ・ミヤマオウム・レッサーパンダ・ニュージーランドハンタウェイ(牧羊犬)・コリデール(ヒツジ) ・ビントロング
●訪ねた動物園:神戸どうぶつ王国

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オウムやインコといえば、明るい色合いや派手な彩りの羽を思い浮かべるのではないでしょうか。神戸どうぶつ王国のバードパフォーマンスショーに登場するベニコンゴウインコ・ルリコンゴウインコもイメージ通りの美しさです。野生のかれらはペアの絆がとても強い動物なので、こうやって近縁種同士で「タンデム飛行」をさせてやることも、飼育下での生活に刺激を添える効果があります。

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さて、うってかわって渋い色合いのこの鳥。ニュージーランド南島の高山だけに住むミヤマオウムです。現地では「ケア(kea)」と呼ばれています。高山性のオウム類は世界でもかれらだけで、何百万年も他のオウム類と隔てられたままで進化してきました。神戸どうぶつ王国には二羽(雌雄)のミヤマオウムがいますが、元々好奇心が旺盛な鳥なので、腰をかがめて脅かさないように待てば、こうしてすぐ近くまで来てくれることもあります。

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あちこちを齧るのも日課のうちです。木の皮を剥がし壁をうがちますが、食べてしまうことはないとのことです。

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地味な印象のミヤマオウムですが、実は最も知能が高い鳥のひとつと言われています。

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当園のペアも給餌ボックスを自力で開け、リンゴや固形飼料、ヒマワリの種などを楽しみます。給餌は一日二回行なわれますが、一連の写真を見比べると、ボックスの蓋を閉じた金具を巧みに外しているのがわかるでしょう。リンゴはおやつ程度の量ですが、特に大好きで必ず完食します(※)。

 

※神戸どうぶつ王国のミヤマオウムは西日本初の飼育展示ですが、これらの個体は姉妹園である那須どうぶつ王国からやってきました。那須どうぶつ王国の個体は餌を工夫して食べさせる試みも一足先に進んでいて、棒を使って餌を採るなどの作業もこなします。下掲リンクの動画を御覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=uLGuAN4UhaA

 

ではなぜミヤマオウムはこんなにも好奇心旺盛で賢い鳥へと進化したのでしょうか。かれらが高山で生活していることが関係していると考えられます。ニュージーランドの高山は厳しい環境で食物を確保するのも難儀です。そんな環境に適応して生きてきたため、ミヤマオウムたちは食物を得るための知能や器用さを持つようになったと考えられています。食性の幅も広くなっています。もっぱら植物質を食べますが、昆虫やその幼虫なども好みます。

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食性の変化や拡張が動物たちの進化につながるという意味では、レッサーパンダとも比較できるかもしれません。レッサーパンダの場合、肉食獣の系統(アライグマなどと近縁)ながら竹笹を主食とすることで独自の進化を遂げています。当園でもこんな姿が観察できます。

しかし、ミヤマオウムの食性の広さや賢さ・器用さは時には人間とのトラブルのもとになったりもします。以下、少しだけお話ししてみましょう。

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ニュージーランドは牧畜の国としても知られます。神戸どうぶつ王国のドッグパフォーマンスショーでは、ニュージーランド人の「羊飼い」(トレーナー)の笛による指示でヒツジの群れを操る牧羊犬の姿を見ることが出来ます。柵に追い込んだヒツジたちの上に乗ってみせるのは、迫力のある吠え声のニュージーランドハンタウェイ。
しかし、ミヤマオウムの住む山地に牧畜が広がっていった歴史の中では、ミヤマオウムの群れがヒツジを襲って肉をついばんだりしたためにミヤマオウムたちが駆除されるといった軋轢もありました。
人の活動とミヤマオウムの間に生じる問題としては、現在でも開発によるミヤマオウムの野生の食物の減少とともに人の出すゴミなどをミヤマオウムが荒らすといったことが見られます。餌付けられた若い個体は野生の食物について学ばなくなることもあり、種としての将来が危ぶまれます。人と動物の関係や距離については、わたしたち人間の側が状況を自覚し、方策を考えていかなければなりません。

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再び、ミヤマオウムのペア。飛び乗る個体に対して、もう一羽はちょっと避けるようなそぶりです。別に仲たがいしているわけではないのですが、オスが積極的にメスに寄っていくのに対して、メスは時折距離を取ろうとします。かれらはどちらも2015年生まれで、ペアとしての展開はまだまだこれからに期待です。

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取材時(2016/11/21)、ビントロングのペアも駆け引きの真っ最中という様子でした。ビントロングは別の記事でも紹介しましたが、このオス「ダム」も那須どうぶつ王国由来で、同園の子どもたち二頭の父親です(※)。

 

※詳しくはこちらを御覧ください。
「ポップコーンのにおいのする熊狸」

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最後にもう一枚。一見、渋い色合いのミヤマオウムですが、ふとした折にこんな鮮やかさを覗かせてくれたりもします。動物たちのそれぞれに特徴的なありさまや意外な姿。
動物園に行きましょう。

 

※ニュージーランドの保全局およびミヤマオウム保全トラストのサイトを参考にしました。

Kea: New Zealand native land birds – Department of Conservation
http://www.doc.govt.nz/kea
Kea Conservation Trust NZ http://www.keaconservation.co.nz/

 

◎神戸どうぶつ王国
https://www.kobe-oukoku.com/

写真提供:森由民

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