トップ十人十色の育ち方~どの子にもうれしい子育てのはなし~第20回「すべての子どもへの教育 インクルーシブ教育と知的障害(知的発達症)へのアプローチ 」(後編)

大学教員。横浜国立大学大学院教育学研究科修了 修士(教育学)博士(社会福祉学)。特別支援教育士、日本ムーブメント教育・療法協会認定常任専門指導員。東京都オリンピック・パラリンピック競技大会ONE -Our New Episode-東京2020 NIPPONフェスティバルMAZEKOZEアイランドツアー プロダクションマネージャー。世田谷区オフィシャルチャンネル 発達障害理解のための啓発動画「ハッタツ凸凹あるある」 監修。現在、鶴見大学短期大学部保育科准教授、北里大学・日本体育大学非常勤講師。俳優東ちづるが理事長を務める一般社団法人Get in touchのプロボノとして活動。障害のあるなしにかかわらない保育・教育について実証研究を行い、さらに被災地での子ども支援、被災地保育・教育として現地へ出向き奮闘中。

第20回「すべての子どもへの教育 インクルーシブ教育と知的障害(知的発達症)へのアプローチ 」(後編)

ここまで「インクルーシブ教育」の”いま”についてお話ししてきました
 
第18回(前編)
第19回(中編)
 
 
インクルーシブ教育は、障害の有無にかかわらずすべての子どもたちが地域の学校で共に学び、成長することを目指す教育システムです。この教育方針は、すべての子どもが平等に教育を受ける権利を持ち、個々のニーズに応じた適切な支援を受けながら学ぶべきであるという考えに基づいています。インクルーシブ教育は、障害児を単に通常の学級に配置するのではなく、学校全体で多様性を受け入れ、すべての生徒が互いに学び合い、成長できる環境を整えることを目的としています。これは、教育の平等と多様性を重視する現代教育政策の中核を形成しています。
インクルーシブ教育の概念は20世紀中盤に始まり、1960年代の人権運動で障害を持つ子どもたちへの平等な教育機会が強調されました。1970年代のアメリカでは障害者教育法が制定され、障害を持つ子どもたちが一般学校で学ぶ権利が法的に保証されました。1994年にユネスコのサラマンカ宣言が採択され、インクルーシブ教育が国際的に支持されるようになり、すべての子どもが障害の有無にかかわらず同じ教室で学ぶ権利を持ち、また、学校は家庭や地域社会と連携し、すべての子どもがニーズに応じた教材や教育方法を提供されることとの認識が強化されました。インクルーシブ教育の実現には、教師の追加研修や適切な資源の確保、学校内の意識改革を含む教育環境の適応が必要とされ、社会全体での支援と偏見の解消が求められています。
インクルーシブ教育は、すべての子どもに社会的スキルや自尊心の向上などのメリットをもたらし、教育の平等を実現するために教育システム全体の変革を促し、個々の生徒のユニークなニーズに応じた教育の提供が教育の包括性を達成する鍵とされています。
 
 
まとめ
インクルーシブ教育と知的障害に関する理解は、全ての子どもが教育を受ける機会を得ることができる社会を築くために重要です。「ノーマライゼーション」とは、障害の有無にかかわらず、全ての人が地域社会で普通に生活できる社会を実現するという考え方です。この理念は、障害者だけでなく、高齢者など支援を必要とするすべての人々が共に生きる社会を目指すものであり、特に教育分野での実現が求められています。
 
特別支援教育は、障害のある子どもたちが個々のニーズに応じた適切な支援を受けることを目的としています。これまで障害の種類に応じて特定の場所で教育が行われてきましたが、すべての子どもが共に学ぶ環境へのシフトが進んでいます。これにより、障害のある子どももない子どもも一緒に学び、共に成長することが強調されています。
 
知的障害については、知的機能の発達が遅れている状態を指しますが、適切な支援があれば学びの場を広げることができます。そのため、インクルーシブ教育、すなわち全ての子どもが自分の能力に応じた教育を受けることが非常に重要です。
 
また、社会全体として、知的障害に対する理解を深め、差別や偏見を減少させることが求められています。教育現場では、全ての子どもが自分の可能性を最大限に発揮できるような支援を提供することが目指されており、それによって各生徒のユニークなニーズに応じた教育を実現することができます。インクルーシブ教育は、障害の有無にかかわらず、全ての子どもたちが社会的スキルや自尊心を向上させる機会を提供し、教育の平等を実現するために不可欠なものと言えそうです。
 
 
最後にひとこと~
ここまでお伝えしてきたインクルーシブ教育は、障害や病気のあるなし、国籍や宗教の違いに関係なく、すべての子どもが共に育ち、学ぶことを追求することです。震災被害がある日本においては、遊ぶ機会が以前より制限されている被災地の子どもも同様だと考えています。
今回、私は震災のあった輪島市の保育所にて包括保育を行いました。被災地の保育者と大学教員として互いに子どもへの想いを話し合うことで保育や教育へとつながるひとつの事例となったと考えています。
私の目標は、すべての子どもたちが一緒に学び、成長できる社会を作ることです。障害のある子どもや被災地で過ごす子どもたちも、みんなが保育や教育を受けられるようにサポートしていきたいと思っています。これらの取り組みが、子どもたちにとって明るい未来への道を開くと信じています。
 
 
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横浜国立大学大学院教育学研究科修了。修士(教育学)、特別支援教育士、日本ムーブメント教育・療法協会認定常任専門指導員。現在、鶴見大学短期大学部保育科准教授、北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科非常勤講師。女優東ちづるさんが理事長を務める一般社団法人Get in touchの理事としても活動。障がいのあるなしにかかわらず、どの子にもうれしいまぜこぜの保育をめざし日々幼稚園や保育所、こども園へ出向き奮闘中。