[児玉ひろ美]
JPIC 読書アドバイザー
台東区立中央図書館司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。鎌倉女子大学短期大学部非常勤講師など、幅広く活動。近著に『0~5歳 子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。
第74回「世界を知る絵本 その3:平和や命を考えるきっかけに」
長い夏休み、子どもたちはさまざまな経験を通し、身体も心もひと回り成長することでしょう。また、8月は平和や命について見聞きすることが多い時期です。そんなときおすすめの、「平和や命」について、今回は「世界を知る絵本:その3」を拡大してご紹介します。世界を知ることこそが、平和や命を考える一番のきっかけです。これらの絵本を通じ、世界をより身近に感じて頂けたらたら嬉しいです。
【平和を考えるきっかけになる絵本】
『国旗のえほん』戸田やすし:編集/戸田デザイン研究室/1987.7/3歳から
1987年の出版以来、この絵本以上の国旗の絵本はないといわれるロングセラー。1ページに一つ(一国)のレイアウトで48国。馴染みのある国から初めて出会う国まで、その美しさに目が離せません。どの国にも、その国にしかない、世界で一つだけの模様や配色があり、歴史や文化、暮らしがあります。その1つ1つに思いを馳せる入り口となる1冊。巻末の世界中の国旗が並んだページも圧巻です。
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『世界の市場 おいしいたのしい!24のまちでお買い物 』マリヤ・バーハレワ:文/アンナ・デスニツカヤ:絵/岡根谷美里:訳/河出書房新社/2022.5/5歳から
小さいお子さんも一緒にご家族で楽しめます。世界中24の市場を、1月から12月まで1ヶ月に1国2都市ずつ巡ります。それぞれの国にどんな市場があって、どんなお店があるのか、その季節の野菜はどんなものがあり、どんな行事があり、どんな料理を作るのか。訪れる時、持ってゆくと便利な物やその国の最小単位のお金とそのお金で買える食品など、楽しい情報がいっぱいです。
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『きょうはふっくら にくまんのひ』メリッサ・イワイ:作/横山和江:訳/偕成社/2022.9/5歳から
リリの暮らす6階建てのアパートには、各階に出身国の違うおばあちゃんが暮らしています。ある日リリのナイナイ(中国語:おばあちゃん)がリリの大好きな肉まんを作ろうとすると、キャベツがありません。そこで、リリは6階のポーランド出身のバブシアのところへ行きます。すると…。異文化でくらす人々が、互いに違いを認め助け合い、楽しく暮らす様子が描かれています。
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『ぼくがラーメンたべているとき』長谷川義史:作・絵/教育画劇/2007.07/5歳から
「ぼくがラーメンたべているとき、となりでミケがあくびした」で始まり、隣の家、そのまた隣の…と、どんどん視線を広げ世界へ移してゆきます。地球の裏側にいる子どもには何が起きているのか。労働・破壊・飢え、そして…。読み終えたら、説明や質問をせず、お子さんの感じるままにしておきたい作品ですが、自発的なことばには、必ず寄り添い共感を。
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『The Peace Bookピース・ブック』ドット・パール:作/堀尾輝久:訳/童心社/2007.7/3歳から
「平和」という抽象的な概念がわかるのは5歳頃かと思いますが、楽しさは3歳頃から感じられます。「へいわ」って、「いろんな おんがく たくさん きいて たのしいね」「ともだちと だきあいっこ」「せかいの みんなが おいしい ピザで おなか いっぱい」。かつてアメリカで平和教育の教材として話題になった作品で、英語併記になっています。
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『キーウの月』ジャンニ・ロダーリ:作/ベアトリーチェ・アレマーニャ:絵/内田洋子:訳/講談社/2022.8/大人へ
片手に乗るほどの小さな詩の絵本です。イタリアの世界的な文学者ロダーリは子どもの本のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞受賞者。昨年ウクライナ救援のために緊急出版され、話題になりました。ウクライナ・キーウの月は私たちが見上げている月と同じ月。「空を旅しながら みんなに光をとどけます」「わたしの光は パスポートなしで 旅をします」の言葉が心に響きます。すべての子どもに優しい眠りがありますように。
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