[児玉ひろ美]
JPIC 読書アドバイザー
台東区立中央図書館司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。鎌倉女子大学短期大学部非常勤講師など、幅広く活動。近著に『0~5歳 子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。
第82回「入園入学進級の絵本」&「世界を知る絵本 その8:お友だちの国を知る(多様性)」
入園・入学・進級と、子どもにとって春は期待と不安のシーズンです。そんな時、子どもと一緒に読みたい絵本や、手渡してあげたい絵本を集めました。「世界を知る絵本」第8回目は、出会いの季節に「お友だちの国を知る絵本」をご紹介します。今年は特にオリンピックイヤーでもありますので、親子で多様性を具体的に話し合うきっかけにも。
【入園入学進級の絵本】
『ゆっくとすっく きょうからおともだち』さこももみ:絵 たかてらかよ:文/ひかりのくに/2010.06/3歳から
「ゆっくとすっくシリーズ」の1冊ですが、テーマは二人の出会いです。ぽかぽか広場の大きな木の下で出会った、ゆっくとすっく。「一緒に遊ぼう」と声をかけ、お互いの名前と好きな物を教え合いっこ。ああ、友だちってこんなふうに名前を呼び合って、目を合わせて、一緒に嬉しくなって、仲良くなってゆくのですね。
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『ようちえんのはる・なつ・あき・ふゆ』おかしゅうぞう:作 ふじたひおこ:絵/佼成出版社/2010.02/3歳から
幼稚園の一年間ってどんなことがあるのでしょう? 年少さんが幼稚園に入園してから1年間のよくある一年間の行事や様子を辿れます。元気いっぱいな子、楽しそうな子、戸惑っている子、不安な子。あ、この子は悪戯を考えているのかしら? など、さまざまな表情の子どもが描かれていています。行事を知る楽しさもありますが、描かれている子どもの表情を追いながら、お子さんの気持ちに自然と添うこともできそうです。
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『しょうがっこうがだいすき』うい:作 えがしらみちこ:絵/Gakken/2019.04/5歳から
作者は2010年生まれの秋元ういさん。ういさんは小学校2年生の時、父親の出版(『20代に伝えたい50のこと』秋元祥治)に影響され、この絵本を書きました。これから小学校へ入学する子や1年生になったばかりの子に、学校への不安がなくなるように、学校で困ることがないように、学校がもっと楽しくなるように…と、自分で考えたアドバイスを半年以上もかけ、自分で書き上げたそうです。
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『がっこうへ くまをつれてゆかないで』マーク・スペアリング:文 ブリッタ・テッケントラップ:絵 三原泉:訳/BL出版/2024.02/3歳から
学校にくまを連れていったら…いえいえ、絶対に連れて行ってはいけません。だって、教室にはくまが座ることができるイスはありません。それに、みんなの給食だってくまが全部食べてしまうかもしれない。それにね…。小学校に限らず幼稚園でもどこでも、新しい場所への不安は、親子それぞれにありますね。そんな時一緒に読んで、笑って、最後にはホッとしてもらえる1冊です。
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【世界を知る絵本】
『ようこそみんなの世界へ 世界中の子どもたち、ばんざい!』モイラ・バターフィールド:文 ハリエット・ライナス:絵 西山佑 山崎伸子・訳 /化学同人/2021.04/5歳から
4月は出会いの季節です。さあ、どんなお友だちに出会えるでしょう? 103の国や地域のお友だちの生活をみてみましょう。言葉はもちろん文化や習慣、大切にしていることなど。世界は本当に広くて楽しいことを、子どもの視線で紹介しています。対象は小学校生ですが、民族衣装のイラストや身近な挨拶などが紹介されていますので、一緒に会話をしながら読めば4・5歳児から楽しめます。オリンピックの開催時期にご家族でご覧になるのもお勧めです。
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『せかいのひとびと』ピーター・スピア:絵と文 松川真弓:訳/評論社/1982.01/4歳から
小学校中学年以上と紹介されていることもある絵本ですが、親子で開くのであればこれほどわかり易く、長期間楽しめる作品は少ないと思います。宇宙の星の一つであるこの地球には、いったいどんな人が、どんな風に暮らしているのでしょう? 体の大きさも、肌の色も違い、話す言葉も、家も、食べ物も違ううえに、民族・風習・文化などが違う素晴らしさや不思議さを、幼い子でもわかる言葉と絵で紹介する大型絵本。日本でも既に40年以上読み継がれています。
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