トップ教えて!ハテナさん~子育てコラム~便育コラム 第25回排泄時の音が気になる?

常磐短期大学准教授、アクトウェア研究所代表、早稲田大学人間総合研究センター招聘研究員。乳幼児の発達心理学を専門とし、子どもの排泄行動などを研究テーマにしている。著書に絵本「うんぴ・うんにょ・うんち・うんご」「うんこダスマン」(ほるぷ出版)、「保育園は子どもの宇宙だ!トイレが変われば保育が変わる」(北大路書房)などがある。幼稚園、保育園の園環境のデザインや提案を行っており、特にトイレ空間が得意である。

[第1回~第21回執筆者]
環太平洋大学教授・お茶の水女子大学名誉教授・十文字学園大学名誉教授・福岡女学院大学大学院客員教授、学術博士。発達心理学、言語心理学、認知科学、保育学を専門とする。著書に『子育てに「もう遅い」はありません』(冨山房インターナショナル)など多数。

便育コラム 第25回排泄時の音が気になる?

外出先でトイレに入ると個室内に「音消し装置」が設置されているところが少なくないですね。これは主に女性が排泄中の音を他者に聞かれたくないという理由で洗浄水を流しながら用を足すようになったことがきっかけになっています。多くの女性が自分の排泄音をカモフラージュするために水を沢山流すので水道料金がかさんでしまうため、節水目的で「音消し装置」が開発されたのでした。
 
子どもが自分の排泄時の音を恥ずかしいと感じ始めるのは小学校の中学年以降に多く、特に女児に目立ちます。男児は音よりも排泄行為そのものを恥ずかしがる傾向がありますが、小学校の高学年をピークに恥ずかしさは落ち着いてゆきます。女児は音を恥ずかしがって、中学校、高校に行ってもそれは持続します。そして音をカモフラージュするのはむしろ恥ずかしさというよりはエチケットとして定着してゆくようです。音を消さないのは他者に対する非礼であるという認識に変わっていくのです。
 
2年ほど前に大学生にトイレ利用に関するインタビュー調査を行ったことがありましたが、最近の大学のトイレは男子トイレにも「音消し装置」が設置されているところも増えているようで、それを使い始めた男子大学生は「便利だと思う。あれば積極的に使いたい」と話した学生が多かったのです。
 
扉の無いトイレで平気で用を足していた幼児期の子どもが、扉のあるトイレを使うことで、羞恥心を感じるようになるという話を「第18回 いつから排泄がはずかしくなるの?」で書かせていただきましたが、上のインタビューはまさに「音消し装置」がある環境で用を足すことで、音に対する羞恥心が芽生えているということを説明していると思います。環境によって羞恥心は作られるということなのですね。
 
幼児期の子どもが自分の排泄音を気にして恥ずかしがるという話は今のところあまり聞こえてきませんが、様々な場所のトイレがどんどんキレイになってますます高機能化してゆくと、もしかしたら幼稚園や保育園のトイレにも「音消し装置」が設置される日が来るのかもしれません。
 
そうなれば、幼児期から音を気にする子どもも増えると予想できるわけですが、なんとも窮屈な感じがしますねぇ。
「音消し装置」を使いながら用を足すことが日本人の用足しスタンダードになりつつあるような気がしてなりません。

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常磐短期大学准教授、アクトウェア研究所代表、早稲田大学人間総合研究センター招聘研究員。乳幼児の発達心理学を専門とし、子どもの排泄行動などを研究テーマにしている。著書に絵本「うんぴ・うんにょ・うんち・うんご」「うんこダスマン」(ほるぷ出版)、「保育園は子どもの宇宙だ!トイレが変われば保育が変わる」(北大路書房)などがある。幼稚園、保育園の園環境のデザインや提案を行っており、特にトイレ空間が得意である。

[第1回~第21回執筆者]
環太平洋大学教授・お茶の水女子大学名誉教授・十文字学園大学名誉教授・福岡女学院大学大学院客員教授、学術博士。発達心理学、言語心理学、認知科学、保育学を専門とする。著書に『子育てに「もう遅い」はありません』(冨山房インターナショナル)など多数。